いろはにほへと

「心のともしび」という落語で、文字の読み書きできない人が 一生懸命習うが なかなか覚えない。気短の先生が怒りだして教えるのを厭だという。それでも何とかかんとか言いつつ先生に食らいついて教えてもらおうとする。実は、娘の結婚話で、無筆(むひつ)の親をもって肩身の狭い思いを娘にさせたくないから頑張っている、という話を聞いて先生も心打たれ教え始める。
そんな内容の噺だったと思いますが、三遊亭圓生氏の話で聴いた、
「これが『い』」「これが『は』」「これが『に』」と気短の先生が一生懸命教えていく先生と生徒とのやり取りの温かさがほんわかと伝わってきました。

 

そういえばいろはにほへとって、意味があるんですよね。
日本人ってすごいですよね。初夢に枕の下に入れる宝船の絵に描かれている回文(上から読んでも下から読んでも同じ言葉)だって驚くほど長いし。


「なかきよの とをのねふりの ミなめさめ なミのりふねの をとのよきかな」
(長き夜の 遠の眠りの 皆目覚め 波乗り船の 音の良きかな)


 

「いろはにほへと・・・」は「滋賀大学附属図書館教育学部分館情報 図書館だより」によると

わが国の仮名文字 47 文字を 1 回ずつ使って、一続きの意味をもった文章となるように構成されたものです。作者は教科書にあるように不明で、弘法大師空海が創ったという説もあります。「いろはうた」は、簡単に言うと、「無常観」(世の中は常に一定ではないということ)を表しています。
・・・
ちなみに、「いろはうた」を 7 文字 1 行として区切り(1 行目は「いろはにほへと」、2行目は「ちりぬるをわか」となりますね)、各行の 7 文字目だけをつなげると「咎(とが)なくて死す」となります。このことから、「いろはうた」は、冤罪で亡くなった人(柿本人麻呂だともいわれます)の恨みの暗号が込められたうたであるという説もあります。

ところでこの「あいうえお」と「いろはにほへと」。江戸時代のころは「いろはにほへと」で明治か昭和になって「あいうえお」が考え出されたのかな、と思ったら、両方とも平安時代くらいからあったものらしいです。

仮名文字 47 文字を 1 回ずつ使って文章を作ってしまう、そんな素敵な言葉遊びを、残していきたいですね。


いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす
色はにほへど 散りぬるを 我が世たれぞ 常ならむ 有為の奥山  今日越えて
浅き夢見じ  酔ひもせず